第5回       番外編
          
          「ボランティアと人権」講義要旨



1、金子郁容のボランティア論
   <3つの行動ステップ>(文献1、pp.118−121)
  ステップ1「まず、自分から動く」――勇気をもって
     ・・・・「ふさわしい場所」を空けておく
  ステップ2「評価を相手に委ねる」――ゆったりと
     ・・・・相手の旋律を聴き、相手に自分自身の音楽を奏でてもらう
  ステップ3「相手が動いたら、タイミングよく対応する」恥ずかしがずに 
     ・・・・「つながりをつけるプロセス」

2、人権とは何か
     人権は、
       個人が国家や他者による介入を拒否できる「自由権」
          (精神的自由、人身の自由、経済的自由など)
       個人の尊厳を保障するために国家に請求できる「社会権」
          (生存権、勤労の権利など)
     とに分けることができる。

3、ロックの人権論  「水源池モデル」への批判

4、科学と政治における検証主義と反証主義
 a、科学の場合
  (1)「真理の水源池モデル」としての公理体系
  (2)現代では、公理への承認は、科学者集団の合意/規約に由来する
  (3)これは、科学の検証主義に似ている。
       観察データ →(検証)→ 理論 → 予測
  (4)反証主義 
 b、政治の場合 
  (1)国民の投票/声 → 議会の決定/声 → 法律       
  (2)法律の正当性は、批判の可能性が保証されていることによって、
    獲得されている。
 c、人権の場合
  (1)「国民」は憲法によって人権を認められる
  (2)これでは、本当に他者の人権を尊重していることにならない
     人権は、現実の個々の対面関係において、互いに承認し合うこと
     によって、そのつど創造され確認されるというプロセスの中にのみ、
     成立する。
  (3)このように人々が、互いに一人の人間として出会い、向かい合い、
     認め合う、という関係の中でも、重要なものが、ボランティアである。

5、ボランティアの捉え方
(1)私的な活動としてのボランティア         <重視される要素>
 (a)チャリティーのボランティア(他人のための道徳的行為) 無償性
 (b)自己実現のボランティア  (自分のための文化的行為) 自発性
(2)公的な活動としてのボランティア
 (c)社会参加のボランティア  (社会のための公的な行為) 公共性
6、公共性とは何か
7、ボランティアによる市民的公共性の可能性

図1  ョ「「「「ホ「「「「「ホ「「「「「ホ「「「「「イ      
    、自発性 、 無償性 、 公益性 、           、
    セ「「「「゙「「「「「゙「「「「「゙「「「「「「    
    、 ○   、  ○   、  ○   、ボランティア   、       
    、 ○   、  ○   、  ×   、 あそび     、
    、 ?   、  ×   、  ○   、 仕事       、    
    カ「「「「ヨ「「「「「ヨ「「「「「ヨ「「「「「「
      
図2
     ョ「「「「「ホ「「「「「ホ「「「「「ホ「「「「「「
     、 自己実現 、社会貢献 、お金儲け 、         、 
     セ「「「「「゙「「「「「゙「「「「「゙「「「「「「
     、  ○?   ・   ○    、  ○   、 仕事      、 
     、  ○    、  ○    、  ×   、 ボランティア 、 
     、  ○    、  ×    、  ×   、 遊び      、  
     カ「「「「「ヨ「「「「「ヨ「「「「「ヨ「「「「「「              

図3(この表が未完成) 
         システム     生活世界
         (成果を志向)  (相互了解を志向)
       ョ「「「「「イ  ョ「「「「「「イ               
      ョ゙「「「「「゙「「゙「「「「「「゙「「イ
      、、行政機構 、  、市民的公共圏、  、 公的領域
      ガ「「「「「゙「「゙「「「「「「゙「「コ                    「「「「゙「「゙「「「「「「゙「「イ
      、、市場経済 、  、私生活圏  、  、   私的領域
      ガ「「「「「゙「「゙「「「「「「゙「「コ           
      「「「「コ  カ「「「「「「コ                                 
   (花田達朗『公共圏という名の社会空間』のp.171の図を参考に、
    変更を加えたものです。)

図4  フォーマルセクター        インフォーマルセクター
      行政セクター 
      産業セクター
      市民セクター(第三セクター)

           <参考文献>
1、金子郁容『ボランティア』岩波書店
2、ジョン・ロック『市民政府論』鵜飼信成訳、岩波文庫
3、宮崎繁樹編著『解説 国際人権規約』日本評論者
4、柴田善守『社会福祉の歴史とボランティア活動』大阪ボランティア協会発行
5、ハンナ・アーレント『人間の条件』中央公論社
6、ハーバーマス『公共性の構造転換』未来社
7、花田達朗『公共圏という名の社会空間』木鐸社
8、デビッド・コーテン『NGOとボランティアの21世紀』学陽書房
9、入江幸男「ボランティアと<人権>概念」(『哲学者たちは授業中』ナカニシヤ書店)
10、内海、水野、入江編『ボランティア学を学ぶ人のために』世界思想社近刊