累進税率をいくらにすべきか

讃岐富士に登りました。五合目です。

問題「どのような累進税率が適切であるか」

答えるための一つの基準:

所得税率を全ての人に同率にすることに反対する理由を、前回次のように前回書いた。
「各人が経済活動に参加するときの条件が同じならば、そこから得られた所得に対して、上記の意味で平等な負担を求めることで十分であるが、しかし機会の不平等のもとで生まれた所得の格差に対しては、上記の意味での分配は、平等な再分配であるとはいえない。」

同率課税のこの欠点を解消することが累進税率の基準になるだろう。
資本主義社会での経済活動は、自由競争によって行なわれている。自由競争の結果をそのまま受け入れるべきだ、ということが正当性を持つためには、自由競争に入る者たちのスタートラインが同一であること、つまり機会の均等が保証されていなければならない。
したがって、機会の均等がない社会で行なわれた競争の結果の格差については、機会の不均等を是正するような再分配、つまり累進課税が必要である。その累進税率は、機会の不均等を是正するのに必要なだけということになる。

基準を受け入れたときの次の問題
問題「機会の不均等を是正するのに必要な累進税率が、どれだけのものになるのか、をどのようにして決定したらよいだろうか」

これは哲学の問題というより、厚生経済学の問題でしょうか。

所得税の4つの課税方法

正月に讃岐富士に登りました。

所得税の課税方法としては、次の4つが考えられるでしょう。

1、同額を全ての所得のある人間に要求する。
2、同率を全ての所得のある人間に要求する。
3、累進課税を全ての所得のある人間に要求する。
4、同額の収入になるように全ての人間に納税を要求する。

4を主張する理由:限界効用逓減の法則と功利主義を適用すると、全ての国民の可処分所得が同額になるように国民所得を再分配するのが、国民全体の幸福の総量は最大になる。
4に反対する理由:もしこのような制度にすれば、各人の労働意欲は失われ、国民全体の所得は減少し、結果として、国民全体の幸福の総量は、他の分配方法の場合よりも、小さくなる可能性が高い。

1を主張する理由:各人が、同じ金額の税金を納めることが、平等である。
1に反対する理由:低所得者と高額所得者が、同額の税金を納めることは、平等ではない。なぜなら、高額所得者は、税金によって行なわれる、公共政策の恩恵を、低所得者よりもより多く得ているといえるからである。彼が所得を獲得する生産活動も、彼の消費活動も、低所得者よりはより多く、公共財の恩恵を受けているからである。

2を主張する理由:各人が、生産活動や消費活動において、公共財の恩恵を受けるのが、その金額に比例すると考えると、同率の所得税率にすることが、平等な負担を求めることになる。
2に反対する理由:各人が経済活動に参加するときの条件が同じならば、そこから得られた所得に対して、上記の意味で平等な負担を求めることで十分であるが、しかし機会の不平等のもとで生まれた所得の格差に対しては、上記の意味での分配は、平等な再分配であるとはいえない。

以上の理由で、私は、3が正しい選択だろうと思う。そして、現代の多くの社会では、3の税制が取られている。問題は、どのような累進税率が適切であるか、である。