153   照応の推移則の条件は何か  (What are the conditions for the transitive law of anaphora?) (20250426)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

前回述べた「照応関係の推移性の一般化」のための必要な条件を考えることが、今回の課題でした。最初に考えことは、次のようなことでした。<A(Yw、Zw)という照応関係が成り立つためには、Yは、Zがwで何を指示したのかを知っていることが必要であり、もしZwが他の表現を照応しているのならば、その表現が何を指示しているのかを知っていることである>ということでした。

 しかし、これの条件は過重であることにきづきました。例えば次のような場合があります。「課長の車はどれですか」という問いに「それは、わかりません」と答えることがありえます。ただし、そのときでも、問いの中の「課長の車」と答の中の「それ」の間には、照応関係が成り立っています。この場合には、問うた者も答えた者も、その指示対象を知らないのです。つまり、A(Xw、Yw)という照応が成立するためには、XはYがwで何を指示しているかを知る必要がないということです。

 (このことは、先行詞が対象を指示する名詞句ではなく、先行詞が動詞句や形容詞句や副詞句などであっても、また文や文の集合であっても、似たことが言えます。これらは、何かを指示するのではないとしても、何かを表示するでしょう。そして、その表現の表示の対象を知らなくても、その表現を先行詞として照応することはできるのです。たとえば「彼の走り方はどうでしたか」「私はそれを見ていないのです」の場合がそうです。)

 照応の連鎖は、それを構成する個々の照応が成り立つたてば成り立つとおもわれます。では、そもそも照応が成り立つための必要条件は何でしょうか。