[カテゴリー:問答の観点からの認識]
今回はヘーゲル観念論の3つの段階を説明します。
ブランダムは、A Spirit of Trust (STと略記)で「概念的実在論」を、次のように説明しています。
#「概念的実在論」とは何か
・「客観的世界をつねにすでに概念形式の中にあるものとして理解すること」((ST 3)
・「自然科学が物理的実在として露わにする客観的事実と性質が、それ自体、概念的形式の中にある」(ST3)という主張。
・「世界がそれ自体で客観的に存在する仕方は、概念的に分節化されている、という主張」(ST3)
・「概念的実在論は、世界が客観的にあるあり方は、それ自体で、概念的に分節化されている、という主張である。」(ST54)
ここで「概念形式の中にある」とは、「実質的な両立不可能性と帰結の関係にあること」(SoT 54)です。(<なぜ客観的世界がすでに概念形式の中にあるといえるのか>については後で考察したいと思います。)
#「二様相的質料形相的概念実在論」とは何か
ブランダムによれば、概念的内容は、二つの形式(客観的形式と主観的形式)をとります。
「主観的形式は、義務論的規範的語彙によって明示化され、客観的形式は真理論的様相的語彙によって明示化されます」(ST80)
このように二つの形式をとることを「質料形相的理解(hylomorphic conception):一つの内容と二つの形式」(ST80)であると言います。(ちなみに、概念内容の客観的形式が質料に対応し、主観的形式が形相に対応するというのではなく、同一の内容(質料)が、二つの形相(客観的形式と主観的形式)をとるということです。)そこでかれは「二様相的質料形相的概念的実在論」(bimodal hylomorphic conceptual realism)を主張します。
#客観的観念論とは何か
ブランダムは、概念内容の客観的形式と主観的形式が、相互的(対称的)意味依存の関係にあると主張します。そしてその主張を「客観的観念論」と呼びます。
「彼[ヘーゲル]は、主観的なものの客観的なものへの非対称的な指示依存の背後には、<概念の使用の主観的なプロセスを分節化する概念>と<客観的な概念的な関係を分節化する概念>の対称的な意味依存があると考えています。これが私[ブランダム]が「客観的観念論」と呼んだ教義です。」(ST 365)
(なぜ二つの形式が相互的に意味依存するのかについても、後で考察します。)
#概念的観念論とは何か
「概念的観念論」とは、「概念的実在論」による<二様相質料形相的概念的分節化>の主張と、「客観的観念論」による<客観的概念関係と主観的概念関係の相互的意味依存>の主張を、前提としたうえで、<客観的概念関係が主観的概念関係に依存する>と主張する立場です。
「<客観的概念的諸関係>と<主観的概念的実践とプロセス>の配置全体は、客観性の関係的諸範疇の用語で理解されるのか、それとも主観性の実践的-プロセス的諸カテゴリーの用語で理解されるのか?」(ST369)
という問いに、後者で答えるのが「概念的観念論」です。
「概念的観念論は、二様相の質料形相的概念的実在論と客観的観念論に基づいており、それを前提としています。それらは両方とも、概念的内容の主観的形式と客観的形式の間の対称的な関係を示しています。概念的観念論は、志向的結合の2つの極の間の対称関係のこれらの両方の種類に、この想起的活動の非対称的な優先性というアイデアを追加します。」ST373
(この「想起的活動の非対称的な優先性」がどのようなものであるかについては、後で考察します。)