格差の限界について

貧富の格差は、何処まで容認されるのか?
この問いをつぎのように言い換えてみることができるかもしれません。
相続税率、贈与税率、と所得税率の累進性を何処まで上げるべきか?

さて、この書庫で、所得税の累進税率は、どこまで上げるべきか?
を考えようとして、以前には明確な基準を示せませんでした。
その後、アメリカ発の金融危機が起こりました。我々は、最近の歴史で、日本のバブルの崩壊と、アメリカのバブルの崩壊を経験しました。このようなバブルの崩壊は、社会の存続にとっての深刻な問題となります。
したがって、「このようなバブルの崩壊は、避けるべきだ」といえるとしましょう。

次に、このようなバブルの崩壊は、ある程度の富の偏在を前提しているでしょう。その富の偏在は、所得の累進税率を上げることによって、調整できるのだとしましょう。
そのとき、もし経済学者が、どの程度の累進税の場合に、富の偏在が強くなって、彼らの投資がバブルを生み出す、ということを、理論的経験的に主張できるようになったとすると、そのときには、バブルとその崩壊を繰り返さないために、必要な累進税率、というものが計算できることになります。
もし「我々が二度経験したようなバブルの崩壊を避けるべきだ」と言うのならば、そこから一定の累進税率を算定できるはずです。

累進税率、富の偏在、バブルの発生、この間の関係を実証的に論証してくれる経済研究を待ちたいと思います。現在の累進税率は、すでに低すぎるのではないか、というのが、私の素人予想です。
つまり、現在の累進税率は、現在の財政赤字の原因であるだけでなく、バブルの原因であった可能性もあるということです。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

「格差の限界について」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です