*問いと答えの関係は、サンクションを伴う
問いに対して「p」と答えることは、pを選択することであり、pにコミットすることです。問いは、正しい答えを求めているので、pは正しい答えでなければなりません。もしpが正しい答えならば、pを答えることは感謝されたり褒められたりします。もしpが正しい答えでなければ、答えた者は間違えたのであり、批判され、何らかの罰を受けます。
問いに対して答えることは、このようなサンクション(賞罰)をもちます。つまり「問いに対して正しく答えるべきである」という規範的関係が問答には暗黙的に内在しています。この規範的関係を明示化して、「べきである」という表現でそれを表すことができます。またこの規範的関係を名詞化して「問いに対して正しく答える義務がある」という表現を作ることもできます。
一般に、規則が規範的であるか否かの区別は、サンクションがあるかないかの区別です。サンクションとは、規則従った時に褒賞があり、従わなかった時に罰がある、と言うことです。このどちらか一方だけがあるように見える場合にも、罰がないことが褒章であり、褒章がないことが罰である、と考えれば、常にこの両方があると言えます。
*では、理論的問答関係のサンクションと実践的問答関係のサンクションには、どのような違いがあるのだろうか。
「問いに対して正しく答える義務がある」ということは、両者に共通していいます。違いは、「正しい答え」の違いにあります。理論的問いに対する答えの正しさは、答えとそれが表現する事実との関係に依存するのに対して、実践的問いに対する答の正しさは、答えの実行可能性にあります、いいかえると、答えと<答える者の行為能力と世界の関係>(<その人が世界で何ができるか>)に依存します。
ただし、適合のこの2方向は互いに絡まって成立しているので、理論的問答と実践的問答のサンクションも現実には常に互いに絡まって成立していると言えるでしょう。 これまで理論的問答と実践的問答について見てきたので、次に宣言的問答についても、同様のことを確認したいと思います。