143 <事実に関する記述的問答>と<規範に関する記述的問答>の区別について(On the distinction between descriptive questions about facts and descriptive questions about norms)(20250201)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

#論理学的推論(論理学の語彙だけを含む推論)に関する問答の場合

「pとp→rが成り立つとき、rが成りたつか?」という問いに「rが成りたつ」と答えるならば、この問答は<論理的関係ないし推論関係という事実に関する記述的問答>です。これと似た問答「pとp→rが成り立つとき、rが成り立つと言えるか」という問いに、「rが成り立つと言える」と答えるならば、この問答は上記の問答と同じく、<論理的関係ないし推論関係という規範に関する記述的問答>であるように見えます。なぜなら、「…と言えるか」という問いは規範に関する問いであり、「…と言える」という答えは規範に関する答えだからです。

#経験的事実に関する問答の場合

「机の上にリンゴがあるか」「はい、机の上にリンゴがある」という問答は、<事実に関する記述的問答>です。これは同時に、「机の上にリンゴがあると言えるか」「はい、机の上にリンゴがあると言える」という<規範に関する記述的問答>に書き換え可能である。

#この二つの場合から、すべての<事実に関する記述的問答>は、<規範に関する記述的問答>に書き換え可能である、と言えそうです。

しかし、逆に<規範に関する記述的問答>を<事実に関する記述的問答>に書き換えることは不可能であるように見えます。例えば、「私が今持っているお金で、このリンゴを買えるだろうか」「買えるだろう」という<規範に関する記述的問答>を、<事実に関する記述的問答>に書き換えることは不可能であるように見えます。そう見えるのは、この問答が「お金」「買う」などの規範的概念を含んでおり、それらの規範的概念を非規範的な概念で言いかえることができないように見えるからです。なぜなら、規範的概念を非規範的概念で言いかえることができないように見えるからである。(ミリカンは、目的概念を自然主義的に説明するので、これに反対するかもしれません。)

次回は、この点を考えてみます。