162 仕切り直し:時間関係と問答関係(Starting afresh: Time relations and question and answer relationships)(20251017)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

しばらくこのカテゴリーを離れていたので、仕切り直して、時間について、そして時間と問答の関係について考えたいと思います。時間は、経験的事実の認識と関わります。なぜなら経験的事実の記述は常に一定の時制をもつからです。時間は、「因果関係とは何か」という問題とも関係しています。また「時間は実在するのか」という問題は、「何が存在するのか」という存在論の問題と深く関係しています。したがって、時間論は、認識論や存在論の重要な基礎を構成すると考えます。

 このカテゴリーの先行部分で、論理や判断や行為の規範性が、問いと答えの関係から生じることを論じて来ましたが、ここからしばらくは、時間関係が問答関係と深く関わっていることを論じたいと思います。

#時間関係と問答関係

・世界の中の対象や出来事は、時間関係と空間関係をもちます。世界の中の対象や出来事についての問答、たとえば「このリンゴは食べごろですか」「それはまだ少し酸っぱいので、三日後くらいが食べごろです」という問答は、リンゴの味が時間的に変化することを前提しています。この場合、りんごの味の時間的変化が、問いと答えの内容になっています。

・他方で、問うことと答えることもまた世界の中の出来事であり、時間関係を持ちます。問うことは、答えることに先行します。

では、問答が対象にする時間関係と問いと答えの時間関係は、どう関係するのでしょうか。

ここには入れ子になった構造があります。これを「K構造」と呼びたいとおもいます。私が「K構造」と名付けるのは、いわゆる「クラインの壺」の構造のことです。「クラインの壺」というのは、その外側に指をあててずっと辿っていけば、いつの間にか壺の内側になっており、壺の内側をずっと辿っていけば、再びいつの間にか壺の外側になっているというような壺です。「クラインの壺」は空間的な構造であり、三次元空間の中に具体的に作ることが出来ます。私は、これと似たK構造を、外界の認識に関しても見つけることが出来ると考えます。これを「認識論的空間的K構造」と呼びたいとおもいます。次に、これと同様に「時間的K構造」を見つけることが出来るだろうと推測します。その理由は、空間関係も時間関係も、問答関係によって成立し、K構造は問答関係によって出現すると推測するからです。

 次回は、まずは、「認識論的空間的K構造」の説明に取り組みたいと思います。