170 二種類の正当化(正当化と正統化)について(On two types of justification (justification and legitimation)(20260223)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

前回の最後に次のように述べた。

「問いの答えの適切性とは、より上位の問いに答えることにとっての有用性である。このとき生じる入れ子型二重問答関係全体を支配しているのは、より上位の問いである。では、このより上位の問いをさかのぼっていくことは可能なのだろうか? 」

より上位の問いを遡っていくことは可能である。ただし、その遡りは、問うことの主として経験的諸理由、諸事情を遡っていくことであり、経験的で偶然的な事柄となる。例えば、上位の問いと下位の問いの関係は、文脈が変われば入れ替わることが可能である。したがって、最終的に何か特殊な位置づけを持つ問いにたどりつく、ということはない。(この遡りについて、現時点では、哲学的に興味深い考察をおこなうことがむずかしいので、以下では、二種類の正当化についての話しに戻りたい。)

#二種類の正当化

哲学は主張の基礎づけのみでなく、「広義の正当化」を求めることである。

「広義の正当化」は、狭義の「正当化」と「正統化」に分けられる(ここまでの表現法と異なるが、これからはこのように区別したい)。

狭義の「正当化」は、ある主張をその根拠を示すことによって正当化することである。この正当化は、その根拠をさらに根拠づけるということを繰り返して、もし究極的に基礎づけできたならば、基礎づけだといえるが、もしそれができなくても正当化だということはできるだろう。

ある主張をそれを結論とする推論を示すことによって「正当化」するのではなく、<ある主張を前提として、必要ならばその他の前提を加えて、それらを前提とする推論をおこない、その推推の有用性によって、当初の命題を是認すること>を「正統化」と呼ぶことにしたい。

 主張や意思決定を、その根拠を示すことによって基礎づけることによって正当化することは、主張や意思決定を、その相関質問に対する答えとして正当化することである。他方で、主張をそこからの帰結の有用性によって正統化することは、その相関質問のより上位の問いに答えるために有用であるということによって正統化することである。

#正統化可能な発話は、とりあえず次のように区別できるだろう。

(1)推論によって正当化される発話

(2)推論によって正当化されない発話

*感覚報告:「これは赤い」

*意思決定の発話:「お昼はうどんにしよう」

*宣言の発話:「この子を「ソクラテス」と名付ける」

#主張へのコミットメントと、正当化および正統化への関係

発話にコミットするとは、もし理由や根拠を問われたならばそれに答える責務を引き受けること、つまり発話を正当化する責務を引き受けることである。私たちは、何かを主張するならば、それを正当化することをあきらめることはできない。なぜなら、正当化を放棄して、主張にコミットするということはあり得ないからである。

では、推論による正当化ができない主張の場合には、コミットメントはどうなるのだろうか。例えば、感覚報告「これは赤い」の場合、これを推論で正当化することはできないので、これにコミットすることもできなくなる。ただし、この場合には、私たちは、感覚報告の正当性にコミットすることはできないが、正統性にコミットすることはできるだろう。

感覚報告が正統であるとは、感覚報告「これは赤い」を答えとする問い、例えば「それは何色ですか」という問いの答えが、より上位の問い(「それは食べごろだろうか」)に答えるのに有用であるということである。このその答え「これは赤い」が、「それは食べごろだろうか」に答えるために有用であるということである。この場合には、「それは食べごろだろうか」の答えは、「それは食べごろです」となるだろう。

 ところで「それは何色ですか」の答えが「これは赤くない」であっても、「それは食べ頃だろうか」に答えるために有用である。この場合のより上位の問いに対する答えは「それはまだ食べ頃ではない」となるだろう。

 ここで、Q1に「これは赤い」と答えた人が、「これ」が指示する物を食べるとおいしかったとしよう。つまり、Q1の答えA1を前提として、Q2の答えA2「これは食べごろだ」を導出し、このA2にしたがって、それを食べたらおいしかった。つまり、A2が正しいことを検証した。そこで、A1へのコミットメントは、正統化された。

逆にQ1に「これは赤くない」と答えた人は、Q2にA2‘「これは食べごろではない」と答え、「これ」が指示するものを食べずにおいておおき、もう少しまって食べたときには、熟しすぎていておいしくなかったとすると、「これは赤くない」という答えは、正統化されない。

 一般的な仕方でいうと、<Q1への答えA1が正統である>とは、<それに答えるためにQ1を問うた、Q1のより上位の問いQ2への正しい答えを得るのに有用である>ということである。

この説明は、これまでの説明とはことなる。これまでは、<Q1への答えA1が正統である>とは、<それに答えるためにQ1を問うた、Q1のより上位の問いQ2への答えを得るのに有用である>ということであると述べてきた。違いは、これまでは、単に「Q2の答え」を得るのに有用であると考えてきたが、「Q2の正しい答え」を得るのに有用である、と変更した点である。

もしQ1の答えA1が間違っていれば、それを前提としたQ2の答えA2もまた間違った答えになる可能性が高いだろう。したがってA2が正しい答えであることは、A1を正統化する。