森の中は落ち着きます。人類のふるさと?
「それはどんな花ですか」と問われて
⑤「それは言葉では表現できない花です」
と応えることが、問いの返答になっているのかいないのか、これが問題でした。
「それはどんな花ですか」と問われて
⑥「その問いに言葉では答えられません」
と答えるとすると、これは明らかに通常の意味の返答ではありません。しかも、この返答は一見矛盾しているようにみえます。なぜなら、この返答は言葉による返答だからです。この矛盾を解消するために詳しく言い換えると⑥は次ぎのようになるでしょう。
⑦「通常の意味での返答ならば、その問いに言葉で返答することはできません」
という意味なのです。この発言⑦そのものが返答になっているのですが、この⑦は、<通常の意味でなく特殊な意味での返答>であると理解すれば、矛盾は解消します。
もし、⑤と⑥が同じ意味であるとすると、⑤は「それはどんな花ですか」という問いへの返答ではないことになります。しかし、この場合は、⑤は⑦と同じ意味であり、<返答>についての二つの意味を区別する必要があります。
もし、⑤が「それはどんな花ですか」という問いへの返答であるとすれば、「言葉では表現できない花」は、その花についての言葉による表現であることになり、<言葉>を対象言語とメタ言語に区別しなければ矛盾するということになります。
ところで、次ぎのケースでは、対象言語とメタ言語の区別が不可能でした。
④「このときの白樺湖は、どんな言葉でも言えない美しさでした」
この④が矛盾しないためには、これを次ぎの返答と同じ意味であると理解する必要があります。
⑧「このときの白樺湖の美しさについては、言葉では答えられません」
そして、この⑧が矛盾しないためには、<返答>についての二つの意味を区別する必要があります。
さて、これで本当に矛盾はなくなったのでしょうか。同様の仕方で、形而上学的実在論の主張も、矛盾を回避できるのでしょうか。