「労働力は、商品ではない」の証明
牛を購入した者は、牛を使って農作業をするとき、牛の労働力を買ったのではなくて、牛を買ったのであり、賃金を牛には、支払わない。しかし、牛に餌をやり、牛小屋を作り、牛の世話をするだろう。そうしなければ、牛が死んでしまい、農作業に使えなくなるからである。奴隷は、この牛のようなものであるが、しかし賃金労働者は、奴隷とは異なる。
牛を3日借りて牛を使って農作業をするとき、借りたものは、牛の持ち主に、借り賃を支払う。このとき、借りた者は、牛の労働力3日分を購入したと考えることができる。もし牛の持ち主が、毎朝牛を農場まで連れてきて、お昼にはその牛に餌をやり、夕方には牛を家に連れて帰り、牛に餌をやり牛小屋で眠らせ、翌朝にはまた農場まで牛を連れてゆくのだとしよう。このとき、牛の持ち主は、牛の労働力を売っているといえるだろう。労働者が労働力を売ることは、これと同じだろうか。
二つの間には、大きな違いがある。牛の持ち主は、牛の労働力ではなくて、牛そのものを売ることができるし、牛が死んでも牛の持ち主は死なない。しかし、労働者は、彼の労働力ではなくて、彼そのもの(あるいは彼の肉体そのものを)を売ることができない。彼の肉体が死ねば、労働者も死ぬ。
人間の労働力が、牛の労働力のような商品であると言うためには、少なくとも労働者の肉体が商品でなければならない。しかし、労働者の肉体は商品ではない。なぜなら、人間は、その肉体を商品のような仕方で所有しているのではないからである。したがって、人間の労働力は、牛の労働力のような商品ではない。QED.
これで、証明は完璧でしょうか?