03 所有権を問答の権利に還元できるか? (20200607)

[カテゴリー:問答の観点からの権利論]

プライバシーについての前回の説明に倣って、最も基本的な権利だと考えられている「所有権」についての説明を試みてみよう。

 ある対象Xを所有するとは、

  Xを自由に使用でき、

  Xを自由に処分(加工、売却、廃棄、破壊、など)でき、

  他者がXを使用したり処分したりすることを禁止できる

ということである。

<Xを自由に使用・処分できる>とは、「なぜXを使用するのか?」「なぜXを使用しないのか?」「なぜ売却するのか?」「なぜ売却しないのか?」、「Xをどうするつもりか?」などに答える必要がないということである。

 (なぜなら、もしこれらの問に答えたならば、その返答に拘束され、Xの使用・処分の自

由が制限されることになるからである。なぜなら、例えば「ある理由Yゆえに、処分するのだ」と答えたときには、その理由Yが解消したときには、Xを使用・処分する理由がなくなるからである。もちろんそのときにもXを使用・処分をすることはできるが、その時同じように「なぜXを使用するのか?」と問われたら、答えることが必要になってしまうのである。そのことは所有者の自由をそこなう。)

まとめるとこうなるだろう。

 <Xを所有する>とは、<「Xをどうするのか?」「なぜXを…するのか」という問いに答えることを拒否できる>ということである。別の言い方をすると<「Xの所有に関する問いに答えるかどうか」「どう答えるか」「どういう理由で答えるか」などが、その人の自由にゆだねられている>ということである。

 これらの問いを拒否できる理由は、それが私の問題であり、あなたの問題ではないということである。「問いQが私の問題であり、あなたの問題ではない」とは、「問いQにどう答えるかは、私の自由である」ということである。問いQは、私の個人問題である。

 個人問題によって個人が成立する。前回、プライバシーに関連して、個人情報によって個人が構成されるといったが、個人問題によっても個人が構成される。個人情報は真偽をもつが、個人問題は真偽を持たない。もちろん、ある問題がある人の個人問題であるということは、真偽をもつ個人情報であるが、個人問題そのものは、真偽を持たない。

 もう一つ説明すべきことが残っている。それは、<他者がXを使用したり処分したりすることを禁止できる>とはどういうことか、ということである。これを次に考えよう。