16「価値がある」とはどういうことか (20220507)

[カテゴリー:哲学的人生論(問答推論主義から)]

(しばらくブログのupがなくて、失礼しました。次に何を論じるか、考えていました。

ところで今日は、哲学者D.ヒュームとC.T.さんの誕生日でした。)

これまで、人生の意味、人生の目的、人生の価値について説明し、これらの区別を明確にしようとしてきました。また、人生の価値については、「能力価値」「メタレベルの能力価値」「生存価値」を区別してきました。ここからもう一度、生存価値、つまり「人は生きているだけで価値がある」という主張の意味と正当化について考えたいと思います。

「価値」は関係概念です。

①「Xは価値がある」とは「Xは、あるものYとの関係において価値をもつ」ということです。たとえば、「ダイヤモンドは価値がある」は、「ダイアやモンドは、他の鉱石や金属よりも硬いので、ダイヤモンドは、価値がある」と説明されます。

「XはYにたいして関係Aを持つ」あるいは「XはYとの関係においてAという性質を持つ」それゆえに、「XはYとの関係において性質Aを持つので、価値を持つ」と考えられます。

では、Xは、Yとの関係において性質Aを持つことによって、なぜ価値を持つのでしょうか。なぜなら、主体Zの目的Bの実現にとって、性質Aが有用だからです。

②「Xは価値がある」とは、「Xは、あるものYとの関係において、ある主体Zにとって価値を持つ」ということです。「主体Zとって価値を持つ」とは、「主体Zの目的の実現にとって有用である」ということです。

③ところで「Xが、主体Zの目的の実現にとって有用である」と語ることができるためには、主体Zが、意識的に目的を持ち、その実現のために意図的に行為することが必要です。

「ある木の実が、ある動物にとって価値がある」とは「ある木の実が、ある動物の生存という目的の実現にとって有用である」ということです。しかし、動物についてこのように語ることは、擬人法です。なぜなら、動物は意識して目的を持たないので、動物の行動について目的について語ることは、客観的な事実を語っているのではなく、動物の行動についての人の解釈を語ることだからです。したがって、「Xが主体Zの目的の実現にとって有用である」と語ることができるためには、主体Zが、意識的に目的を持ち、その実現のために意図的に行為することが必要です。

④Xが人の場合には、「ある人は価値がある」とは、「ある人は、あるものYとの関係において、ある主体Zにとって価値を持つ」ということであり、さらに言えば、「ある人は、あるものYとの関係において、ある主体Zの目的の実現にとって有用である」ということです。

これは次の二つの場合に分けられます。

・「ある人の存在が、あるものYとの関係において、ある主体Zの目的の実現にとって有用である」。これは、ある人の「生存価値」に関わります。

・「ある人の活動と能力が、あるものYとの関係において、ある主体Zの目的の実現にとって有用である」。これは、ある人の「能力価値」に関わります。

⑤生存価値について

「ある人Xの生存が、あるものYとの関係において、ある主体Zの目的の実現にとって有用である」ということは、どういうことでしょうか。

ここでXとZが同一人物である場合、「ある人Xの生存が、あるものYとの関係において、その人Xの目的の実現にとって有用である」ということは、どういうことでしょうか。Xが何を目的にするにしても、Xが生存していることは、その目的の実現に有用です。しかし、この場合には、生存そのものに価値があるというよりも、生存がある活動や能力のための手段として、「メタレベルの能力価値」を持つということです。

 では、ある人Xの生存が、その人自身にとって、あるいは他の人にとって、価値があるとはどういうことでしょうか。