[カテゴリー:問答の観点からの認識]
知覚報告を論理結合子で結合して複合命題を作ることができますが、これらの複合命題は、元の知覚報告に還元できるのでしょうか。
ところで、前々回に「還元」について次のように定義しました。「経験判断を知覚報告と推論だけから構成することを、経験判断を知覚報告に還元することと言う」ここでは、この定義に従って考察することにします。
#連言判断は、知覚報告に還元できる。
s(「Xさんの車は青色である」)とt(「Xさんの車は赤色である」)という二つの知覚報告から、連言判断s∧t(「Xさんの車は青色である、かつ、Xさんの車は赤色である」)を推論できます。したがって、連言命題も、上記の定義に従って、知覚命題に還元できます。また連言判断の場合には、知覚報告から連言判断を導出できるだけでなく、連言判断から知覚報告を導出することもできます。例えば、s∧r┣sや、s∧r┣rの導出が可能です。
#選言判断は、知覚報告に還元できる。
p(「Xさんの車は青色である」)という知覚判断、あるいはr(「Xさんの車は赤色である」)という知覚判断から、p∨r(「Xさんの車は青色である、あるいは、Xさんの車は赤色である」)を推論できる。「還元」の定義によるならば、選言判断は、知覚報告に還元できます。しかし、この場合、p∨rから、pを推論したり、rを推論したりすることはできません。つまり、知覚判断から選言判断を導出することはできますが、選言判断から知覚判断を導出することはできません。
#含意判断は、知覚報告に還元できる。
r(「塩が水に溶ける」)が知覚報告であるならば、そこからp→r(「塩を水に入れるならば、塩が水に溶ける」)を導出できます。つまり、上記の定義に基づくならば、含意判断は、知覚報告に還元できます。ただし、選言判断の場合と同様に、含意判断から知覚報告を導出することはできません。
次に、知覚報告に還元不可能な経験判断がどのようにして生じるのかを考えてみたいと思います。