[カテゴリー:問答の観点からの認識]
前回最後に、意思決定の問答とその下位区分について論じると予告したが、そのための準備として、今回と次回は、意思決定の問答とそれ以外の問答との関係を明らかにしておきたい。
#記述的問答、方法的問答、意思決定の問答の区別
前に見た「記述的問答」と「方法的問答」には真理値があった。記述的問答の答えは世界に適合するとき真である。方法的問答の答えは、目的を実現できるとき真である。それに対して、「意思決定の問答」と「宣言的問答」には真理値はない。意思決定の問答や宣言的問答には、真理値はないが適切/不適切の区別はある。
意思決定が適切であるための必要条件の一つは、<意思決定の内容が実現可能である>ことである。
(これらの問答が真理値をもったり、適切であったりするためには、有意味でなければならない。しかし、これらの問答が有意味であることは、記述や方法や意思決定が適切であるための必要条件ではない。なぜなら、これらの有意味な発話の中に、真なるものと偽なるものとの区別、適切なものと不適切なものとの区別があり、有意味でない発話はそもそも、真でも偽でもなく、適切でも不適切でもないからである。)
#遂行文発話と非遂行文発話の区別
・記述的問答の答えは、事実についての主張という発語内行為である。この主張は、遂行動詞を用いる遂行文発話である場合と、遂行動詞を使用しない非遂行文発話である場合がある。
・意思決定の問答の答えは、「…しよう」という意図決定である問答である。この発話は、遂行動詞を用いる「私は、…することを決定する」という遂行文発話である場合と、「私は、…する」という遂行動詞を使用しない非遂行文発話である場合がある。
(ちなみに、方法的問答の答えは、「Aを実現するためには、Bすればよい(Bする必要がある)」という非遂行文発話の場合と、「Aを実現するためには、Bすればよい(Bする必要がある)」という遂行文発話の場合がある。遂行文発話では、主張するという遂行動詞は、条件文全体にかかるだろう。)
#遂行文発話と宣言発話
遂行文発話は、サールがいうように、宣言の発話だといえる。なぜなら、遂行文を発話することで、(適切な条件がそろっているならば)その遂行は実現するからである。「主張する」という遂行動詞を用いた遂行文は、主語が一人称でなければならない。
例えば、「これはリンゴです」と「私は、これがリンゴであると主張する」という二つの発話である。後者の発話は、主張の発話であると同時に、宣言の発話である。
例えば、「うどんを食べます」と「私はうどんを食べると決定します」という二つの発話である。どちらの発話も意思決定の発話であるが、後者の発話は、意思決定の発話であると同時に宣言の発話である。
#以前(134、135回)に宣言的問答を次の3つに区別した。
(1)主張宣言問答:「アウト」
(2)決定宣言問答:「開会します」
(3)定義宣言問答:「水は、H2Oです」
上に述べた二種類の遂行文発話は、主張宣言問答と決定宣言問答に分類されるだろう。
次回は、意図決定問答と宣言的問答の関係について明らかにしたい。
(AIにこの文章の批判をもとめたら、「問答の分類」「問答体系全体」の目的が不明確であると指摘されたので、これについても考えたい。)
