松林 直線を集め 天に向かう
20 NPOと私企業 (20120817)
<社会問題とは、社会によってのみ解決できるような問題として申したてられた問題である>といえます。そして社会組織とは、社会問題を解決するために作られた組織です。しかし、ある社会問題を解決できる組織は、一つであるとはかぎりません。たとえば、ある社会問題は、あるNGOによって解決されるかもしれないが、しかし他のタイプのNGOでも解決できるかもしれないし、また行政によって解決されるかもしれないし、新しいビジネスモデルの企業によって解決されるかもしれません。したがって、<社会組織は、それによってのみ解決できる問題を解決するために作られたものである>とはいえません。ある社会問題が、一つのNGO・NPOによってではなく、多数のNGO・NPOによって解決される場合もあります。
奈良市の中に、奈良市の住民だけで作られているNPOがあるとき、奈良市とそのNPOの関係は、全体と部分の関係ではありません。なぜなら、二つは互いに独立して活動しているからです。しかし、交差というのでもないと思います。どうやら、組織と組織の関係を、人を要素とする集合の重なり方で区別するのでは、不十分なようです。前回の(a)(b)(c)の区別では不十分なようです。
市の活動とNPOの活動の違いは、<市の活動は、その集団のメンバー(市民)の問題を解決することであるが、NPOの活動は、その集団のメンバーの問題を解決することではなくて、メンバーの問題である場合もあるが、より広範な人々の問題を解決するための活動である>という点にあります。
さて、もう一つの気になる組織について考えてみましょう。会社もまた、社会問題を解決するために作られた社会組織のひとつだといえるでしょうか。「会社は、社会問題を解決するのでしょうか。」
たとえば、アダムスミスのいうように、工場での分業によって、安価に大量の製品を生産することが可能になりました。「どうやって、品質のよい道具を安価に提供すればよいのか」という問題を解決するには、工場での生産が必要でしょう。企業は、財やサービスを社会に提供します。しかも不特定多数の人にそれを販売しますから、彼らは、特定の人にではなくて、社会全体に貢献しているといえます。ある製品やサービスが、個人では生産・供給できず、複数の人からなる組織(企業)によって生産・供給可能であるとしましょう。このとき、この企業は社会問題を解決しているといえそうです。
では、それが国営企業であるときと私企業であるときの違いはなにでしょうか。
(社会組織と社会規則の関係については、企業についての考察の後で戻ることにします。私企業(会社)というのは不思議な存在です。私たちが考える図式の中で、企業を適切に説明できないならば、その図式はほとんど無効になってしまいます。)
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