[カテゴリー:ヒトはなぜ問うのか?」
動物のほとんどの行動は探索である、といえるだろう。しかし、それには様々なレベルのものがある。とりあえず3種類の探索を説明しよう。
#走性と反射
・植物は、外部刺激(光、重力、接触、水分など)に応じて成長運動や示す現象(屈性)があるのに対して、動物には、方向性のある外部刺激(光、重力、接触、水分、など)に対して反応する生得的な行動(走性)がある。
・脊椎動物の場合、特定の刺激に対して意識されることなく起こる反応は、「反射」と呼ばれる。これは脊椎動物についてのみ言われるようであり、「脊椎反射」と呼ばれることもある。これは、姿勢反射、体性反射、内蔵反射に分類される。
(これは、非脊椎動物の「走性」と同じ種類のものなのだろうか、それとも異なるものであって、脊椎動物の場合には、走性と反射の両方があるのか、頭が良いとされるタコについても「反射」とは言わないのかどうか、などについては今のところ勉強不足のためにわからない。以下では、とりあえず、非脊椎動物の走性と脊椎動物の反射を同種のものとして扱うことにする。)
このように「走性」と「反射」を理解するとき、非脊椎動物が行う餌の探索は、「走性」の一種だと言えるだろうし、脊椎動物が行う「反射」もまた、探索の一種だと言えるだろう。ここまでのところ、動物がおこなう運動は、「走性」か「反射」であり、それらはすべて探索だとみなせるのではないだろうか。
では、「条件反射」もまた探索行動だろうか。
#条件反射
上記の「反射」は「無条件反射」と呼ばれ、生得的におこなう行動である。これに対して、経験によって獲得された反射行動を「条件反射」(conditioned reflex)と呼ぶ。これは「条件反応」(conditioned response)とも呼ばれる。パブロフの犬は、メトロノームの音を聞いただけで唾液を出すようになる。この条件反射は、探索行動だとは言えないように思われる。ところで、例えば、犬が餌の匂いを嗅ぎつけて、そちらの方向に向かい、餌を発見して食べることを学習したとしよう。このとき、餌の匂いを嗅いで、そちらの方向に向かう行動は、「条件反射」だと言ってよいだろうか。もしそう言えるのならば、この条件反射は、探索行動であるだろう。それとも、これは次に見るオペラント行動だろうか。
(ちなみに、人間ならば、食べ物の匂いを嗅ぎつけて、そちらに向かい、食べ物を発見してそれを食べるとき、「何が美味しそうなものの匂いがする、その匂いはあちらからやってくる、あちらに食べ物があるのだろう、あちらに行ってみよう」というような推論をして、そちらに向かうだろう。だから人間の場合には、反射でも条件反射でもない。)
#オペラント行動とオペラント学習
「オペラント行動」とは、自発的な行動のことである。行動が自発的であるとは、刺激に対する反応としての行動(反射や条件反射)ではないということであろう。オペラント条件づけとは、特定の自発的行動に対して餌を与えて強化したり、電気を流して弱化することである。特定の自発行動をして、餌をもらうことを学習するプロセスは、探索である。例えば、ネズミがたまたまレバーを押して、餌を手に入れる、という経験を、何度かしたのちに、レバーを押して餌を手に入れることを学習するとき、これを「オペラント学習」とよぶ。レバーを押すことと餌を手に入れることの関係を学習し、餌を手に入れるために、レバーを押せば良いことを学習するとき、この学習は、餌を手に入れる方法の探求だと言える。これは、実現したい目標を実現する方法の探索であり、欲しい対象そのものの探索ではない。
さて、上記の例、犬が餌の匂いを嗅ぎつけて、そちらの方向に向かい、餌を発見して食べることを学習した場合を考えよう。このとき、餌の匂いを嗅ぎつけて、餌の方に向かうことは、刺激に対する学習された反応、だと言える。したがって、これは条件反射であろう。しかし、餌の匂いの方向に歩いて、餌を見つけるということの学習は、オペラント学習であろう。この場合、前半の条件反射も、後半のオペラント学習も、探索だといえる。
もう一つ、例を検討しておきたい。排泄行為は、自発的行動だろうか。それは膀胱に尿が溜まってきたという刺激に対する反応ならば、反射であろう。人間の場合には、トイレに行こうと考えて、トイレに行き、そこで排泄するので、大脳を介した行為である。(条件反射もまた大脳を介してした反応であるが、しかしトイレで排泄することは、条件反射ではないだろう。)ペットの犬の場合には、トイレで排泄するように指示されて、成功すると褒められ強化されるという、学習過程を経て排泄行為をするようになるだろう。そうすると、これはオペラント行動である。
人間の探索とこれらの探索との違いは、何だろうか?