11 問うために問わないこと (20201029)

[カテゴリー:人はなぜ問うのか?」

(動物の探索の話に戻る予定でしたが、その前に前回の「選択の選択」に関連したことを書いておきたいと思います。)

#あることを問うことは、他のことを問わないことである。

 ここでいう問わない<他のこと>の中には、二種類のことがある。それは次の二つである。

  ・問いの前提

  ・他の問い

 第一は、問いの前提である。私たちがある選択を問うときには、その問いの前提を受け入れる必要がある。問いの前提とは、真なる答えが成立するための、必要条件である。問う時には、その前提の真理性を受け入れコミットし、それを問わないことが必要である。

 第二は、他の問いである。私たちが各瞬間に問うことができる問いは多数ある。しかし実際にはその中の一つの問いを問うことができるだけである。つまり、私たちは、常に多数の問いの中かラ一つの問いを選択している。ある問いに答えるとは、可能な複数の答えの中から一つの答えを選択することである。したがって、複数の問いから一つの問いを選択することは、前回述べた「選択の選択」である。

#「選択の選択」と、問うために問わないことの関係

 問いに答えることは、選択することであり、その答えにコミットすることである。従って、問うことは、コミットメントを求めることである。これに対して、問うことは、問いの前提を受け入れることであり、問いの前提にコミットすることである。問いの前提にコミットするのだから、問いの前提を問う(疑う)ことはできない。ある問い問うためには、その問いの前提を問わないことが必要である。

ただし、この問いの前提へのコミットは、選択の選択によって行われている。したがって、この選択の選択は、より上位の問いへの答えとして生じる。ある問いの選択は、より上位の問いの答えを見つけるために、問いを設定することである。つまり、そこでは、すでにより上位の問いを選択してしまっている。ある問いの選択は、このより上位の問いの選択から生じるのである。

したがって、ある問いを検討するときには、次の二点も重要になる。

 ・問いの前提を明確にすること

 ・その時その問いをとうことで、問わないことになる問いを明確にすること。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です