21 知覚報告の特徴 (20210613)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

(知覚報告とその他の経験判断の関係について説明したいと考え、いろいろと考えてみたのですが、多様な論点があり思った以上に複雑で難しく、スッキリと説明できません。複雑に絡み合った論点を成立するためにも、知覚報告についてもう少し分析しておきたいとおもいます。)

#知覚報告の特徴

 多くの場合、知覚報告は、単称判断であり肯定判断であり現在形です。

 では、知覚報告はなぜ単称判断になるのでしょうか。私たちは常に多くの対象を知覚しているにもかかわらず、その中から一つの対象を選択してそれについての報告するのは何故でしょうか?それは、知覚報告が、問いに答えるための知覚的な探索の結果である知覚を記述するものであり、問いがすでに一つの対象を選択しているからではないでしょうか。以前にも書きましたが、知覚報告には、一般的につぎのような問答と探索発見の入れ子型の関係があります。

   Q1→探索→発見(知覚)→A1(知覚報告)。

Q1が「これは何色か?」であれば、これの色を探索し、これの色を知覚し、A1「これは白い」と答えることになるので、主語が単数形になるのです。多くの場合、問いにおいて既に主語が与えられています。問いが対象を指示し、答えが述定を与えます。こうして問答によって、指示と述定の結合、主語述語文の知覚報告が出来上がります。

 ただし、問いの主語が複数のこともあり得えます。例えば、「この二つのお皿は似ていますか」に対して、肯定で答えるとき、類似性の知覚報告は、複数形になります。

 「多くの場合、知覚報告はなぜ単称判断になるのでしょうか?」という問いに対する答えは、「知覚報告の相関質問の主語が、多くの場合単数だからである」となります。知覚報告の相関質問は、知覚に依拠して答えられるような問いです。このよう問いの主語が単数になることが多いのは何故でしょうか。

私たちが知覚できるのは個物だ、という回答では、不十分です。なぜなら、私たちは、複数の対象を知覚できるからです。

 この問題を考えてみます。