42 これまでの話のまとめと今後の予定 (20210811)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

これまでの話は、次の4つのパートに分けられます。

第1パート:01回から03回は、認識についての問答の区別を論じています。

第2パート:04回から16回は、錯覚論証の検討と批判を行い、脳科学と素朴実在論の結合を提案しました。

第3パート:17回から29回は、知覚と知覚報告と問いの関係を考察し、<Q1→探索→発見(知覚)→A1(知覚報告)>という入れ子型の関係になっていることを説明しました。

21~26回に、知覚判断の特徴(単称判断、肯定判断、現在形)、27~29回に、多くの経験判断は知覚報告に還元されないことを考察しました。

第4パート:30回からは、知覚報告に還元不可能な経験判断についての考察を始めました。

30回、経験判断を答えとする問答が、二重問答関係、直列問答関係、並列問答関係によって生じることを説明。

31回では、類推が条件反射とは異なることを確認し、32回から帰納法の前提となる「自然の斉一性原理」の考察をはじめました。33回に、それが検証も反証も可能ではないこと、経験判断ではないことを確認し、34回に、自然の斉一性原理の問答論的超越論的証明を試みました。

35~41回では、「世界の無矛盾性」「世界の斉一性」についての考察を始めました。

36回で「分析的に真」と「アプリオリに真」の新しい定義の提案し、37回に論理的概念と経験概念を、保存拡大性を持つか否かで区別することを提案し、38回からはカルナップの「擬似対象文」の概念を参考にして、検討を行いました。41回でたどり着いた結論は、「世界の矛盾性」は論理法則であり、世界の実質とは無関係なテーゼであること、「自然の斉一性原理」は、擬似対象文ではなく、世界の実質と関わる主張であるが、それは検証も反証もできないこと、(帰納推論に限らず)自然についての探究一般が「自然の斉一性」を前提していること、でした。

この第4パートは、全体の見通しなしに検討を重ねって言ったために、多くの論点が錯綜して、わかりにくいものになってしまいました。第4パートの結論としては、知覚報告をふくめて経験判断は、「自然の斉一性原理」を想定しているということです。その証明としては、34回でのべた「自然の斉一性原理」の問答論的超越論的証明が正しかったように思うのですが、そこでは「問いの前提」の理解が曖昧であったので、これを明らかにする必要があります。

#今後の予定

上の課題を念頭に置きつつ、次回からは、第5パートとして「論理学と自然科学の区別」を検討します。その後で、第6パートして「現象の領域」(現象的概念や現象的法則)と「理論の領域」(理論的概念と理論的法則)の区別を検討します(私はクワインの言う「認識論の自然化」に賛成ですが、しかしカルナップが試みていた認識論である「科学の論理学(論理的構文論と意味論)」が全面的に無効になるということもないと思いますので、それをどのように修正する必要があるのかを第6パートで検討したいと思います)。