42 第1章を振り返る(2)(問いが結論となる問答推論とは) (20211116)

[カテゴリー:『問答の言語哲学』をめぐって]

③未完了型(Q2, Γ┣ Q1)では、Q2に答えるために、Q1を立てるというという関係を想定しています。

これは条件(Civ)によって充たされます。

(Civ) ③未完了型(Q2, Γ┣ Q1)の場合には、すべての平叙文前提にコミットし、かつ結論となる問いの直接的答えにコミットするならば、前提の問いの答えとなる少なくとも1つの命題がコミット可能である(柔軟な有用性)。

これは、p24の(C4)(柔軟な認知的有用性)と表現が異なるだけで、骨子は同じです。表現を変えたのは、(C4)を理論的問答推論だけでなく、実践的問答推論にも拡張するためでした。

 つまり、Q2が真なる/適切なる答えをもつことにコミットし、またΓに属するすべての平叙文にコミットするとき、Q1の答えにコミットするならば、Q2の答えとなる一つにコミットすることが可能になる(つまり、Q1の答えを得るならば、Q2に答えるのに役立つ)、ということです。

④は、③の前提の問いQ2が明示的に語られず潜在的なものになっているケースです。つまり、その潜在的な問いに答えるために、結論の問いQを立てる、と言う関係にあります。

実際には、このような二重問答関係において、Q2に答えるためにQ1を立てる、というとき、Q1の答えが得られても、それがQ2に答えるために、役立たないということがありえます。しかし、そのようなケースを③に含めようとすると、論理的な関係が緩くなりすぎるということ、また論理的な関係を緩めた条件を明示することが難しこと、のために条件(Civ)としました。

 念のためにここで注意しておきたいのは、ヴィシニェフスキが科学方法論のための探究の論理として「問いの推論」を考察しているのに対して、私が目指しているのは、探求の論理ではなくて、あくまでも疑問文(問い)と平叙文(命題)の推論関係を明示化するということであり、それは科学研究の文脈を離れても妥当する論理法則の明示化ということです。