105 依頼の発話は、命名や定義にどのように依拠するのか(How do request utterances rely on naming and definition?) (20240215)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

#依頼の発話の適切性

依頼の発話が適切であるとは、次の条件を満たすことだと思われます。

  ・依頼の内容が実現可能であること

  ・発話者が発話相手に依頼する資格があること

  ・発話が誠実なものであること(発話者が、依頼内容が実現可能であると信じていること)

ちなみに、主張の発話の場合にも、同様に適切性を語ることができます。

  ・主張の内容が真であること

  ・発話者が主張する資格があること

  ・発話が誠実なものであること(発話者が、主張内容を真であると信じていること)

#依頼の発話の実現可能性は、命名と定義に依拠します。

「相手が水を持ってくることが実現可能である」が成り立つことを認識するには、命名と定義に依拠する必要があります。なぜなら、依頼内容「水を持ってくる」を理解するには、「水」と「持ってくる」の定義に依拠する必要があるからです。そして、「水を持ってくる」を理解するとは、どのような場合にこれが成り立つかを理解するということであり、それは、どのようの場合に「相手が水を持ってくることが実現可能である」が成りたつかを理解することです。従って、「水を持ってきてください」という依頼の発話の適切性の認識は、「これは赤い」という記述の発話の真理性と同様の仕方で、命名や定義に依拠します。

したがって、サールの分類による行為拘束型発話(命令・依頼)や行為指示型発話(約束)の実現可能性は、それに用いられる語の命名や定義の宣言に依拠する、と言えます。

 では、サールの言う表現型発話は、命名や定義とどう関係するのでしょうか。これを次に考えたいと思います。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。