08 ネットの中での行為と認識 (20200628)

[カテゴリー:問答の観点からの権利論]

 哲学では、伝統的に観想(テオリア)と実践(プラクシス)、認識と行為、言葉と行為を分けることが多いが、ネットの中でこの二つは区別できるのだろうか。

 ネットの中で行為することは、入力することである。たとえば、アマゾンで本を買うことは、本を選んで購入ボタンをクリックすることである。ネットの中で認識することは、グーグルで検索し、記事を選んでクリックし、それを読むことである。求める記事が見つからないときには、見つかるまで、検索に使用する語句を変更してやり直すことになる。記事が見つかれば、その記事を手掛かりに(もし必要ならば)さらに情報を探すことができるだろう。ネットの中では、行為も認識も記事を選択してクリックすることである。

 ネットの中での問うことは、語句を入力して検索することであり、答えをえることは、検索結果の表示を見ることである。ネットの中で問いかけられることは、クリックするかどうかの選択を迫られることであり、答えることは、クリックしたり、取りやめたりすることである。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

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