41 ベイズ推論から問題設定の反証主義へ (20221023) 

[カテゴリー:日々是哲学]

ポパーの反証主義は、命題が科学的であるかどうかを区別するために、命題が反証可能であるかどうかをもちいることを提案しました。ポパーは、それを命題が有意味か無意味かの区別に使えるとは考えていませんでした。科学的な命題は、反証可能であるから、反証されたならば、それを修正することになります。ポパーは、それの繰り返しによって、次第に真理に近づくと考えました。

これに対しては、<ある命題が反証されたときに、他の前提を加えたり修正したり除去したりして、その命題を維持することが可能である>という批判がありました。反証を無効化するこのプロセスは「免疫化」と呼ばれています。ただし、反証主義には、探求を始めるために確実な出発点を見つけなければならない、という困難を回避できる、という長所がります。

ところで、問いの前提について、それの証明が必要だと考えるのではなく、とりあえず問いの前提を設定して、それが反証されたならば、それを修正することによって、より正しい問いの設定に接近していくという方針を考えることができます。これを「問題設定の反証主義」と呼びたいとおもいます。ところで、ポパーの反証主義に対して、どのような命題も反証に対して免疫化可能であるという批判があったように、この問題設定の反証主義に対しても、どのような反証に対しても免疫化可能であるという批判が可能です。ただし、反証主義の長所、つまり<探求を始めるために確実な出発点を見つける必要がない>という長所をより、強化するのに役立ちます。つまり、反証主義では、ある問題に対する答えをとりあえず設定して、その正しさをテストにかけるという仕方で探求を開始できたのですが、そのとき、問題の設定の適切性については言及していませんでした。ある問題に対する答えを設定する前に、問題の設定をしているのですが、この問題の設定についても、私たちはとりあえず問題を設定して、それの適切性をテストにかけて修正するという仕方で、探求を始めることができるのです。

 (これがベイズ推論と似ていることは、一か月後に、カテゴリー「人とはなぜ問うのか」で論じたいとおもいます。)