13 第4章の見取り図 (4) (20201121)

[カテゴリー:『問答の言語哲学』をめぐって]

「4. 4 超越論的論証の限界」では、問答論的矛盾を用いた超越論的論証は、他の超越論的論証と同様の限界をもち、究極的な根拠づけにはなっていないことを説明しました。

 まず超越論的論証一般の限界を説明しました。それは、超越論的論証が、古典論理を前提して成り立つ論証であるということにあります。それは次のような事情です。

 今仮に、命題T が、真なる経験的命題E の超越論的条件であることを証明するとします。この場合には、

   E → T

が成り立ちます。これを証明するには、この対偶

   ¬T→¬E

を証明すれば、古典論理に基づいて、これからE→Tを導出することができます。

 ¬T→¬E の証明は、次のように行うことができます。例えば、T が「私が存在する」であり、E が「私はpを主張する」であるとすると、¬T→¬E は、「もし私が存在しなければ、私がpを主張することはない」となります。これは自明であるかもしれませんが、この自明性は、日本語の「存在する」や「主張する」の意味に基づいています。ここでは仮に、これらの語の意味の理解については問わないことにして、仮に¬T→¬E が成り立つとしましょう。その場合、それに続く超越論的論証は、次のようになります。

    1(1)¬T→ ¬E     仮定

    2(2)¬T        仮定

   1, 2(3)¬E       (1)(2)MP

     4(4)E         仮定 

 1, 2, 4(5)¬E&E     (3)(4)&+

     1, 4(6)¬¬T      (2)(5)¬+

     1, 4(7)T              (6)二重否定消去

       1(8)E → T         (4)(7)→ +

この証明の(6)から(7)のステップにおいて、「二重否定消去」を使用しています。しかし、この推論規則は、古典論理では認められますが、直観主義論理では認められないものです。その意味で、超越論的論証は、古典論理の採用を前提しています。

 もし、このような論証で究極的な根拠づけを行うとすれば、古典論理の採用を正当化する必要がありますが、それはなされていません。これが、超越論的論証の論証としての限界です。

 問答論的矛盾による超越論的論証の場合にも、ある問いに対して否定の返答が、問答論的矛盾を引き起こすことを介して、肯定の返答の必然性を証明しました。ここでも、この最後のステップで「二重否定消去」を用いており、古典論理の採用を選定するという限界を持っています。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

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