28 部分構造論理の意味の保存拡大性について (20210827)

[カテゴリー:『問答の言語哲学』をめぐって]

論理的結合子の「保存拡大性」とは、次のような意味でした。<その論理結合子を導入規則と除去規則を連続適用したときできる推論が、その論理結合子を使用する以前にも可能であった推論である>と言うことでした。

これをもう少し明晰に証明するために、<ある論理的語彙を導入規則と除去規則を連続適用したときできる推論>を、<その推論が他の論理結合子を含んでいる場合(場合1)>と<含んでいない場合(場合2)>に分けます。

場合1には、論理的には、次のような可能性があります。<論理結合子C1の導入規則と除去規則を連続適用したときできる推論が、論理結合子C2を含んでおり、逆に、論理結合子C2の導入規則と除去規則を連続適用したときできる推論が、論理結合子C1を含んでいる>、かつ<C1とC2は、それ以外の語彙の意味を変化させている>、という可能性ないし怖れがあります。

しかし、場合1に当てはまるのは、論理結合子「∨」だけであり、その他の論理結合子や疑問表現は、場合2になります。つまり、それらの導入規則に除去規則を連続適用してできる推論は、どれも論理結合子を含まない推論でした。そして、「∨」の導入規則に除去規則を連続適用してできる推論は、「?(s)、p、p→s、r→s┣s」であり、他の論理結合子(→)を含んでいる(参照24回)のですが、ただし、「→」の導入規則に除去規則を連続適用してできる推論は、他の論理結合子を含んでいません。それゆえに、もし「→」が保存拡大性を持つのならば、「∨」も保存拡大性を持つと言えます。

それゆえに、問題は、場合2の表現が、保存拡大性を持つと言えるかどうかです。例えば「∧」について確認しましょう。「∧」の導入規則と除去規則を連続適用して得られる推論は次でした。

  ?(p)、p、r┣p

これは正しい問答推論ですが、論理結合子を含んでいません。ただし、p┣pという同一律を推論規則として成立する推論だと言えます。問答論理学では、この同一律は、相関質問を前提に加えて、

  ?(p)、p┣ p

と表記すべきだろうと思います。

 通常のシーケント計算では、p┣pに、構造規則「弱化」を適用して、p、r┣pを証明することができます。私は、ここで問答論理学でのシーケント計算の規則を考えて、それを明示すべきなのですが、それができることを想定して説明します。つまり、?(p)、p┣pから ?(p)、p、r┣ pが証明できるだろうと想定します。

 つまり、この問答推論は、p┣pというシーケント計算の公理(同一律)と構造規則「弱化」という二つの規則によって正当化されます。また、この証明の過程で、構造規則「縮約」「交換」と派生規則「カット」を用いています。つまり、論理結合子と疑問表現の保存拡大性を証明するために、シーケント計算を用いています。(ここではシーケント計算を適当に翻案して利用しているので、厳密に証明するには、問答論理のシーケント計算を定式化する必要があります。)

 シーケント計算の構造規則と公理(同一律)とカット規則が、他の表現の意味を変えないことを証明する必要があるでしょう。なぜなら、これらが他の表現の意味を変えるので、「∧」が他の表現の意味を変えないように見えている可能性が残るからです。論理結合子の利用が、他の表現の意味を変えないことの証明に、部分構造論理を使用しているのならば、部分構造論理が、他の表現の意味を変えないことを証明する必要があります。

 では、これ証明をどうやって行えばよいでしょうか。公理(同一律)や構造規則やカット規則やについては、導入規則と除去規則に対応するものがありません。したがって、拡大保存性についての、これまでの証明とは異なる証明の仕方が必要になります。次回は、これについて考えたいと思います。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

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