08 真なる問答の規範性はどこから生まれるのか (20220813)

[カテゴリー:問答の観点からの真理]

問答の真理性を定義するには、問答の規範性以外にどのような条件が必要でしょうか

真なる問答の規範性と適切な問答の規範性の区別があるのですが、この二つを区別するのは、その規範性が何に基づくのか、あるいはどこから生まれるのか、という違いだといえるでしょう。真なる問答の場合、その問答関係の規範性が生じるのは、次の二つの場合があります。その規範性が<問答を構成する語句の意味だけに基づいている場合>と<問答を構成する語句の意味に加えて事実にも基づいている場合>です。

<問答を構成する語句の意味だけに基づいている場合>の規範性は、分析的な規範性であり、これれによって成立する真理を「分析的真理」と見なすことができます。これに対して<問答を構成する語句の意味に加えて事実にも基づいている場合>の規範性は、綜合的な規範性であり、これによって成立する真理を「綜合的真理」と見なすことができます。

他方で、問いと答えの関係の区別でなく、問いの成立の仕方を次のように区別することができます。<問いの前提の意味を理解すれば、それだけから問いの前提が成立することがわかる場合>と、<問いの前提の意味を理解するだけでは、そこから問いの前提が成立するとは言えず、問いの前提が成立するというためには、事実に依拠する必要がある場合>があります。前者の場合の問答の真理は、経験的認識を必要としないので、これを「アプリオリな真理」と呼び、後者の場合の問答の真理は、経験的認識を必要とするので、これを「アポステリオリな真理」と呼ぶことができます。

このようにして問答の真理について二種類の区別(分析的/総合的とアプリオリ/アポステリオリ)ができます。これの組み合わせによって、4種類の問答の真理を区別することができます。

{この区別について、カテゴリー[『問答の言語哲学』をめぐって]の34回でより詳しく説明しています。]

問答が真であるためには、その問答関係が規範性をもつ必要があり、その規範性が、どこから生じるかによって、一方で問答の適切性と真理性を区別でき、また同時に他方で、真理性の種類を区別することができると考えます。ただし今回は、分析/綜合の区別と、アプリオリ/アポステリオリの区別を説明できただけです。まだ、必然/偶然の区別と、事実的/規範的の区別の考察が残っています。(この二つについては、すこし考えあぐねていますので、もう少し時間をいただきたいとおもいます。)

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。