凡人さん、コメントありがとうございました。
トランプの例は、人間が作り上げた秩序だからよい例ではないというご指摘ですね。私もそうかもしれないとおもいます。
ただし、問題は次のようなことです。
たとえば、コップに水がはいっており、その中に角砂糖を一つ入れたとします。いずれ砂糖は水に溶けます。最初のうちは、砂糖が溶けた水は、コップの下のほうだけにあるのだろうとおもいます。しかし、そのままにしておくと、水の分子運動につれて、砂糖はコップの水の全体に、均一に広がるでしょう。
これを、エントロピー増大の法則の一例だと考えてよいだろうとおもいます。
しかし、私が前回のべた疑問点は、次の通りです。
「コップの中に角砂糖が溶けずにあることが、解けている状態よりも、エントロピーが小さい。」
「溶けた水がコップの下のほうにあるよりも、コップの全体に均一に広がっている方が、エントロピーが小さい。」
このような主張もまた、ちょうどトランプの数字の解釈が人間の作り出したものであるのと同様に、人間の作り出した解釈なのではないか、というのが、私の疑問でした。
私の疑問点が、うまく伝えられたかどうか、わかりません。
どなたでも、ご批判をお願いします。
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「人間が作り上げた秩序」ということの意味ですが、
トランプの例で言えば、例えばその数字が「1」であろうと「5」であろうと、物理的に見ればそれは印刷されたインクの染みでしかないのです。「1」とか「5」という意味付けは人間がしたものです。
これに対してコップの中の角砂糖の溶け具合というのは、物理的な現象そのものです。トランプの話しと角砂糖の話は本質的に異なっていると思います。
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いったん,何回かに分けて投稿したのですが,論旨がぐちゃぐちゃになってしまったので,それは削除してまとめたものを改めて投稿します.
先生の疑問は疑問というよりも,ボルツマンの功績はそういいかえることができる,ということだと思います.
つまり,ボルツマン以前は,「なぜかエントロピーといわれる物理量は時間とともに増大する,不思議だ」と思われていたのが,ボルツマンの仕事によってエントロピーとは微視的状態の数(の対数)に比例するものだということがわかりました.
すると,「そもそも確率論的には同等なはずのいくつもの微視状態のなかで,ある少数の微視状態の組だけをわれわれは『秩序だっている』と呼び,そのほかの圧倒的多数の微視的状態を『無秩序状態』として十把ひとからげにしている,そういうものの見方では確率論的にエントロピーが増大するのはあたりまえでしょ」ということが明らかになった,というのがボルツマンの功績だと思うのです.
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ですから,むしろ,そのような人間の解釈に過ぎない(客観的に見ると何の特別性もない)エントロピー最小状態が宇宙初期に実現していたということが,いまの宇宙論ではおおきな謎になってしまうのです.
もうひとつ,この統計的議論では,エントロピー増大則は解けているようで解けていない,という話があるのですが,それはまた別の話なのでまたの機会に.
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森田さん、すみませんが、「先生」でなく、「さん」でお願いします。先生のふりをするのは、疲れますから。
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すみません,以下長文です。私的にメールをお送りしようかと思ったのですが,いったん公開で書いたのにその続きを私的にしてしまうのはどうかなと思ったので,書き込ませていただきました。ご容赦ください。
>「そもそも確率論的には同等なはずのいくつもの微視状態のなかで,ある少数の微視状態の組だけをわれわれは『秩序だっている』と呼び,そのほかの圧倒的多数の微視的状態を『無秩序状態』として十把ひとからげにしている,そういうものの見方では確率論的にエントロピーが増大するのはあたりまえでしょ」
↑何かおかしなことを書いているような気がしてきました。
微視的状態に注目するとどれも力学的に等確率で実現するのですが,巨視的な状態に注目すると,ある巨視的状態Aを実現するような微視的状態は多くあり,また別の巨視的状態Bを実現するような微視的状態は少ない。それゆえ,はじめは状態Bでも,時間がたつと状態Aが実現する確率が高いというのが,エントロピー増大則だというのが,ボルツマンの言っていることです。
ここで「巨視的状態」というのはなにか。
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例えば数値が1から5まででそれぞれが5枚ずつあるトランプを用意します。そしてここから任意に選んだ5枚を床に並べるとします。「巨視的状態に注目する」というのは,どの数が何枚,どの順序で並んだかということは無視して,たとえばその算術平均にだけ注目するようなことにあたります。
トランプの選び方は,5つの升目に重複を許して1から5の数値を並べることに相当するので,順序まで考慮すると5^5=3125通りです。
このなかで,平均値が1になるような並びかたはすべてが1になる1通りだけ。簡単のためにエントロピー=状態数だとすると,これはエントロピーが1の状態にあたります。平均値が2になるような並びかたは,1+5C3*2+5C2*3C2=51になります(たぶん)。もっとも多いのは平均値が3になるときで,これは51+5!=171になると思います。
そして平均値が3になるような並び方のほとんどはなぜかわれわれが「秩序がない」と感じるような並び方になっています(しかしこれと熱力学でいうエントロピーが関係するのかどうかはわかりません)。
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たとえば,いま白と黒に色分けされている平面がある。しかし黒い領域と比べて白い領域の面積は圧倒的に小さい。いわば黒地に小さな白いしみが点々とあるような状況を思い浮かべます。そして,白い領域から点が時間的に対称な運動方程式にしたがって出発したとすると,白い領域からはすぐに点はいなくなり,後のほとんどの時間を黒い領域で過ごすことになる。これは当たり前のようですけど,しかし,このようなことがつねに起きているというのはおかしい。なぜなら,時間的に対称なのだから,白から黒へとつねに点が移動するということは黒から白へと点が移動するというありえないことがつねに起こっているということと同じことだからだというわけです。
もちろん,このからくりははじめに「誰か」が白い領域に点をおくことにあります。そしてそれにはエネルギーが使われますから系全体のエントロピーは増大します。だから,すべてのサブシステムは実は開放系である,という解釈が可能なのです。しかしそうだとしても,じゃあ宇宙のはじめはなぜ白い領域に点があったのですか,という問いは可能です。 おわり。