07 権利を問答の権利として捉えることのメリットは何か? (20200627)

[カテゴリー:問答の観点からの権利論]

<アクセス権>

 プライヴァシ-や知的所有権など新しく登場してきた権利を捉えるのに有用である。とりわけ、ネット社会における権利関係を説明するのに有用である。なぜなら、ネットの中における行為とは、情報交換、言い換えると問答しかないからである。したがって、ネットの中での権利は、問答の権利である。

 ネットの中での権利として特徴的なものの一つは、サイトへのアクセス権である。多くのサイトは、パスワードによって、特定の個人や集団にだけアクセス可能なものである。

 このアクセス権をどのように説明できるだろうか? アクセス権がないとは、あるサイトの中に入って質問したり、発言したりすることができないということである。アクセス権は、サイトの中での問答の権利である。

 たまたま手に入れたパスワードで、他人の情報をみることは、ただ見るだけで、悪用するのではないとしても、違法であるだろう。なぜなら、そのサイトの中の情報をみることは、そのサイトに問いかけて、答えを得ることに他ならないからである。これは、住居侵入に似ている。ただしここでの住居は、サイトであり、問答空間である。

(ネット社会に特有の権利として、他にどんなものがあるだろうか?)

#問題

 すべての権利を問答の権利に還元することは、あらゆる時代と社会の権利について成り立つことなのか、それとも西洋近代社会、とりわけの発展である現代社会において、始めて十全に成り立つようになったことなのか?

 その答えは、おそらく前者である。 ネットの中に限らず、人間社会は、ヒトの群れが言語を獲得して人間社会となって以来、コミュニケーションで出来ている。それは、<社会がコミュニケーションによる合意によって構成されている>ということだけでなく、<社会は、社会的事柄についての問いや答えの義務と許可と禁止のルールによって構成されている>

 対象Oについての情報は、AがBに質問してもよいもの/質問できないもの、Bが質問に答えられないもの/質問に答えるべきもの/Bが答えなくてもよいもの、などから構成されている。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

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