[カテゴリー:『問答の言語哲学』をめぐって]
「4.3 問答論的矛盾による超越論的論証」では、表題通り、問答論的矛盾を用いて、いくつかの超越論的論証を行います。
ある問いに対する答えが、問答論的矛盾を引き起こすならば、それを避ける答えを行うことが、問答関係を成立させるための必要条件(超越論的条件)となります。ある問いに対する特定の返答のこのような必然性を「問答論的必然性」と呼ぶことにしました。ここでは、問答論的矛盾をもちいて、問答関係の成立条件についての超越論的論証を行いました。
まず、問答関係の基礎的超越論的条件として3つを説明しました。
「私の声が聞こえますか?」
「いいえ、聞こえません」
「私の言葉がわかりますか?」
「いいえ、わかりません」
「誠実に話していますか?」
「いいえ、誠実に話していません」
これらの否定の返答は、問答論的矛盾を引き起こすので、このように問われたときには、肯定の返答をすることが問答論的必然性を持ちます。そこで次の3つが問答関係の基礎的超越論的条件になります。
(1) 会話者が互いに声を聞くことができる(絡路の相互確認)
(2) 会話者が相互の言語を理解できる(言語の相互理解)
(3) 会話者が互いに誠実に話している(誠実性の相互確認)
次に、問答関係の意味論的超越論的条件を考察しました。詳細は省きますが、それは次のようなものです。
(1)照応関係
(2)タイプとトークンの区別
(3)言語の規則に従うこと
次に、問答関係の論理的超越論的条件を考察しました。
(1)同一律
(2)矛盾律
次に、問答関係の規範的超越論的条件について考察しました。
(1)根拠を持って語る義務
(2)嘘をつくことの禁止
(3)相互承認の義務
これらは、問答関係が成り立つための超越論的条件の網羅を意図したものではありません(おそらくこれら以外にもあるだろうと予想します)。重要なことは、これらが問答関係が成り立つための超越論的条件であるということです。