41 第1章を振り返る(問答推論の定式化について)(20211116)

[カテゴリー:『問答の言語哲学』をめぐって]

『問答の言語哲学」の「合評会」に備えて、各章を振り返っておきたいと思います。

「第1章 問答関係と命題の意味――問答推論的意味論へ向けて」の1.1では、推論が問いを前提することを指摘し、推論が前提する問いを明示化すれば、問答推論となることを説明しました。結論として、この問答推論は次の4つの形に分類できるでしょう(参照『問答の言語哲学』p. 33ff)。

①完了型(Q,Γ┣p):問いと平叙文が前提となり、平叙文が結論となる推論である。

②暗黙的完了型(Γ┣ p):①の前提の問いが暗黙的である派生形である。平叙文が前提となり、平叙文が結論となる推論(平叙文だけからなる通常の推論)である。

③未完了型(Q2, Γ┣ Q1):問いと平叙文が前提となり、問いが結論となる推論である。

④暗黙的未完了型(Γ┣ Q):③の前提の問いが暗黙的である派生形である。平叙文が前提となり、問いが結論となる推論である。

これらの推論が妥当であるための条件は、条件は次の4つです。

(Ci)前提にコミットするならば、常に結論にコミットすること。(前提や結論が平叙文であれば、それにコミットするとは、もしそれが真理値を持つ文ならば、真であることにコミットする。もしそれが真理値を持たない文ならば、その適切性にコミットすることである。前提や結論に問いが含まれるならば、その問いにコミットするとは、問いが健全であること、言い換えると、問いが真なる答えないし適切な答えをもつことにコミットすることである。)

(Cii) ①完了型(Q,Γ┣p)の場合には、結論が前提の問いの答えとなっていること。

(Ciii) ④暗黙的未完了型(Γ┣ Q)の場合には、どの前提も、そのままでは、結論となる問いの直接的答えとならないこと(情報付与性)。

(Civ) ③未完了型(Q2, Γ┣ Q1)の場合には、すべての平叙文前提にコミットし、かつ結論となる問いの直接的答えにコミットするならば、前提の問いの答えとなる少なくとも1つの命題がコミット可能である(柔軟な有用性)。

問答推論のすべての形に妥当する条件は、(Ci)のみです。 ①完了型(Q,Γ┣p)の妥当性は、この(Ci)と(Cii)によって説明され、③未完了型(Q2, Γ┣ Q1)の妥当性は、(Ci)と(Civ)によって説明され、④暗黙的未完了型(Γ┣ Q)の妥当性は、(Ci)と(Ciii)によって説明されます。

②暗黙的完了型(Γ┣ p)は、問いを含まない通常の推論ですので、その妥当性は、(Ci)だけで説明されます。

ここで説明が不足していたのは、③と④の問答推論における結論のQないしQ1の位置づけです。

これを次回に考察します。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

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