66 振り返りと仕切り直し (20220306)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

これまでの経緯を振り返ってから、仕切り直したいと思います。

このカテゴリーの第6パートして56回から始めたのは、ブランダムの「概念実在論」を問答の観点から検討して発展させることでした。(第6パート以前のこのカテゴリーの議論については、このカテゴリーの説明をご覧ください。)

56回において、まず試みたのはブランダムの「概念実在論」を「問答推論実在論」へと展開し、それを吟味することでした。概念実在論とは、<「客観的事実と性質」が概念的である、つまり互いに非両立性や推論的帰結の関係にある>という主張です。もし通常の推論は問答推論の一部として成立すると言えるのならば、非両立的関係と推論的帰結という推論的関係もまた、問答推論関係の部分として成立することになります。したがって、推論的関係の実在性を主張することは、問答推論関係の実在性を主張することになります。<客観的事実と性質が、概念的である、つまり互いに対して問答推論的関係にある>と主張することになります。

57回:問答推論関係は、論理的な関係であって、実際の認識の過程から独立に成立するということを説明しました。ただし、推論が妥当だとしても、その前提や結論が成り立つとは限りません。もし前提が成り立つならば、結論が成り立つという関係が成り立てばよいからです。従って、問答推論関係が成り立つとしても、前提の問いが成り立っている必要はないのです。

58回:ブランダムは、この推論的関係に客観的なものと主観的なものがあり、前者を記述するには、真理様相語彙が必要であり、後者を記述するには義務的規範的語彙が必要であり、この二つの語彙は、互いに意味依存すること、したがって、客観的推論的関係と主観的推論的関係もまた互いに意味依存すると論じていました。このことは、客観的問答推論関係と主観的問答推論関係についても成り立つでしょう。(この相互的意味依存についても、また改めて吟味したいと思っています。)

59回:このように拡張した上で、ブランダム=ヘーゲルの「概念実在論」を受け入れることができるかどうか、特に存在論的な問題を考えようとしました。。

 問答推論的関係は、言語や理論が変われば異なるので、ほとんど無限に多様なものが考えられます。事実は、無限に多様な仕方で語れる無限に多様な構造を暗黙的にもっているのかもしれませんが、次のように考えることもできます。

 私たちは、「これはリンゴですか?」と問われたら、事実に問い合わせ、「はい、これはリンゴです」という答えを返し、「これはナシですか?」と問われたら、事実に問い合わせて、「いいえ、これはナシではありません」という答えます。このとき、事実とは、さまざまな問いの入力に対して、それぞれ一つの答えを出力する関数であると見なすことができます。このように問いを入力として答えを出力とする関数を「問答関数」と呼ぶことにしました。(このように考える時、問答推論関係は、事実から得られるものですが、事実そのものが持つものではありません。その意味では、概念実在論から少し離れるかもしれません。)

 <事実は問答関数である>というこのアイデアの吟味から、仕切り直して始めたいとおもます。