52 ベイズ推論は問答推論として成立する (20221020)

[カテゴリー:人はなぜ問うのか?]

まずベイズ推論と問答推論の関係を説明します。

#ベイズ推論は、問答推論として成立する

ベイズ推論も推論であるなら、前提から結論を導出するという形式になっているはずです。そしてそこでも、前提から論理的に導出可能な結論の候補は複数あるでしょう。したがって、そこで一つの候補を結論として選択するときには、問いが働いているだろうと推測します。つまり、ベイズ推論もまた、問答推論として成立すると推測します。以下がその説明です。

  ベイズの定理:  =P(X|A)P(A)/P(X)

 この定理は、次のように変形します。

    = P(A)(P(X|A)/P(X))

そうすると、この式は次のように理解できます。

<主観確率P(A) に、係数 P(X|A)/P(X)を掛けることにより、証拠 X を加味して、より客観性の高い確率 P(A|X) を求めることができる>

このようなベイズ推論の前提は、P(A)とP(X|A)/P(X)であり、結論は  です。これらの前提が成り立つとは、<P(A)がある値aとなる、つまりP(A) = aが成り立つ>、かつ、< P(X|A)/P(X)がある値bとなる、つまり P(X|A)/P(X)=bが成り立つ>ということです。結論P(A|X)が成り立つとは、<P(A|X)がある値cとなる、つまりP(A|X) = cが成り立つ>ということです。

しかし、P(A) = aとP(X|A)/P(X)=bから帰結するのは、P(A|X) = c であるとは限りません。例えば、 P(X|A)/P(X) P(A) = (P(X|A)/P(X))/P(A) もまた帰結します。ここでP(A|X)が結論として選ばれるのは、問い「P(A|X)はいくらか?」あるいは「「P(A|X)はcであるか?」に答えるためであり、この推論がこの問いに答えるためのプロセスとして行われているからです。

次に、この問いとベイズ確率がどう関係しているのかを説明します。

#ベイズ確率と問答の関係

ベイズ確率P(y|x)は、事象xが起きた時に、事象yが起きる確率を表します。このようなベイズ確率は、問答の関係に似ています。今次の問答があるとします。

①「これは何ですか?」「これはリンゴです」

問答①は、「これ」が指示する対象が存在することを、問いの前提(問答の前提)としています。今仮に、事象xを命題「これが対象aを指示する」で、事象yを命題「対象aがリンゴである」で表すことにします。このとき、ベイズ確率P(y|x)は、事象xが成り立つとき、事象yが成り立つ確率を表しますが、事象xが成り立つとき問い「これは何ですか」が成り立つとすると、次のようにいえます。

  P(y|x)は、①の問いが成り立つとき、①の答えが成り立つ確率を示す。

一般的には次のように言えるでしょう。

<問いQは、常に何らかの前提をもち、問いが成立するためにはその前提が成立することを必要条件とします。ここで問いQのすべての前提の連言が表している事象をpとするとき、問いある問いQに対して、Qのある答えが表している事象をaとするとき、その答えがQの正しい答えとなる確率は、P(a|p)と表現できます。>

(この後、見かけ上の能動的推論と問答としての能動的推論の区別、にまで話を展開しなければ、一区切りとはならないのですが、実は「自由意志」についての学会発表のための準備が切迫してきましたので、新しいカテゴリー「自由意志と問答」を立ち上げ、一か月ほどそこに書き込みしたいとおもいます。ここでの議論の続きは、一か月後、11月の下旬に再開したいと思います。)