15 視覚パーツと触覚パーツ (20210529)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

視覚空間と触覚空間がズレているときでも、私が見ているのはマグカップそのものであり、触っているのはマグカップそのものです。ただし、そのときに見ているものと触っているものが、同一だと思えないということが生じています。このような事態は素朴実在論とは矛盾しません。視覚と触覚がそれぞれ対象そのものを捉えており、その二つをどのように統合するかが問題だからです。二つの空間の同一化を再構築するとき、対象を適切に捉えることができるようになりますが、しかしそれができる前でも、対象そのものを捉えていたと言えるからです。対象の視覚パーツと触覚パーツがバラバラになっており、うまく組み合わせることができていないけれども、視覚パーツそのものと触覚パーツそのものは与えられていると言えるのです。先天盲の人は、触覚パーツだけを対象そのものとして理解しています。もちろん、視覚パーツがあることを聞いて理解していますが、それがなくても、その人は対象そのものを捉えているのです。また、例えばコウモリの空間認識のように、人間にはないような感覚器官をもった生物がいれば、それは対象について人間が知らないパーツを持っているかもしれません。

このように理解するとき、逆さ眼鏡の経験は、素朴実在論と矛盾するものではありません。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

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