180 意図決定の問答と他の問答の関係(1)(Relationship between Q&A on decision-making and other Q&A (1)) (20260930)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

前回最後に、意思決定の問答とその下位区分について論じると予告したが、そのための準備として、今回と次回は、意思決定の問答とそれ以外の問答との関係を明らかにしておきたい。

#記述的問答、方法的問答、意思決定の問答の区別

前に見た「記述的問答」と「方法的問答」には真理値があった。記述的問答の答えは世界に適合するとき真である。方法的問答の答えは、目的を実現できるとき真である。それに対して、「意思決定の問答」と「宣言的問答」には真理値はない。意思決定の問答や宣言的問答には、真理値はないが適切/不適切の区別はある。

意思決定が適切であるための必要条件の一つは、<意思決定の内容が実現可能である>ことである。

(これらの問答が真理値をもったり、適切であったりするためには、有意味でなければならない。しかし、これらの問答が有意味であることは、記述や方法や意思決定が適切であるための必要条件ではない。なぜなら、これらの有意味な発話の中に、真なるものと偽なるものとの区別、適切なものと不適切なものとの区別があり、有意味でない発話はそもそも、真でも偽でもなく、適切でも不適切でもないからである。)

#遂行文発話と非遂行文発話の区別

・記述的問答の答えは、事実についての主張という発語内行為である。この主張は、遂行動詞を用いる遂行文発話である場合と、遂行動詞を使用しない非遂行文発話である場合がある。

・意思決定の問答の答えは、「…しよう」という意図決定である問答である。この発話は、遂行動詞を用いる「私は、…することを決定する」という遂行文発話である場合と、「私は、…する」という遂行動詞を使用しない非遂行文発話である場合がある。

(ちなみに、方法的問答の答えは、「Aを実現するためには、Bすればよい(Bする必要がある)」という非遂行文発話の場合と、「Aを実現するためには、Bすればよい(Bする必要がある)」という遂行文発話の場合がある。遂行文発話では、主張するという遂行動詞は、条件文全体にかかるだろう。)

#遂行文発話と宣言発話

遂行文発話は、サールがいうように、宣言の発話だといえる。なぜなら、遂行文を発話することで、(適切な条件がそろっているならば)その遂行は実現するからである。「主張する」という遂行動詞を用いた遂行文は、主語が一人称でなければならない。

例えば、「これはリンゴです」と「私は、これがリンゴであると主張する」という二つの発話である。後者の発話は、主張の発話であると同時に、宣言の発話である。

 例えば、「うどんを食べます」と「私はうどんを食べると決定します」という二つの発話である。どちらの発話も意思決定の発話であるが、後者の発話は、意思決定の発話であると同時に宣言の発話である。

#以前(134、135回)に宣言的問答を次の3つに区別した。

(1)主張宣言問答:「アウト」

(2)決定宣言問答:「開会します」

(3)定義宣言問答:「水は、H2Oです」

上に述べた二種類の遂行文発話は、主張宣言問答と決定宣言問答に分類されるだろう。

次回は、意図決定問答と宣言的問答の関係について明らかにしたい。

(AIにこの文章の批判をもとめたら、「問答の分類」「問答体系全体」の目的が不明確であると指摘されたので、これについても考えたい。)

179 記述的問答の下位区分と方法的問答の下位区分(2)Subdivisions of Descriptive Question-and-Answer and Subdivisions of Methodological Question-and-Answer (2) (20260910)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

前回は、記述的問答を次の二つに下位区分した。

(1)自然的事実(自然的出来事)の記述的問答

(2)規範的事実の記述的問答

ここで重要なことは、全ての事実を「自然的事実」と「規範的事実」に分けるとき、問答という出来事は、(2)に分類される、ということである。

記述的問答は、規範的事実であり、自然的事実ではない。ただし、「自然的事実の記述的問答」は、規範的事実(出来事)である。そして「規範的事実の記述的問答」それ自体もまた、規範的事実(出来事)である。

これらの二つの事実に対応して、方法的問答を次の二つに下位区分できる。

  • 技術的問答:「ある自然的状態を実現するために、どうすればよいのか」と問い、答えることである。
    • 実践的問答:「ある規範的状態を実現するために、どうすればよいのか」と問い、答えることである。

前回述べたように、問答は規範的事実である。それゆえに記述的問答が規範的事実であるのと同様に、方法的問答も規範的事実である。

どんな問いであれ、問いを立てそれに答えられないとき、私たちは「どうやってその問いにこたえたらよいのか」と問うだろう。これは「ある問答(規範的状態)を実現するために、どうすればよいのか」と問うことであり、この問いを問い、それに答えることは、実践的問答である。

次に、意思決定の問答の下位区分を考えてみよう。

178 記述的問答の下位区分と方法的問答の下位区分(1)Subdivisions of Descriptive Question-and-Answer and Subdivisions of Methodological Question-and-Answer (1) (20260906)

[カテゴリー:問答の観点からの認識]

(方法的問答の3つの下位区分のうちの第三のものがどのようなものになるかを説明すると予告して考えてきたが、むしろ下位区分を二つにする方がよいかもしれないと思い始めた。今回は、それを検討したい。)

私は、最初は、問答を3つ(理論的問答、実践的問答、宣言的問答、あるいは次の3つ記述的問答、意思決定の問答、宣言的問答)に区別し、その後4つ(記述的問答、方法的問答、意図決定の問答、宣言的問答)に区別するようになった。記述的問答は、記述的真理性をもち、方法的問答はプラグマティックな真理値をもつ。次に、それぞれの下位区分を考えようとした。そこで、記述的問答と方法的問答の間には、次のような密接な関係があることに気付いた。

#記述的問答の下位区分と、方法的問答の下位区分の関係

方法的問答は、次のような形式であった。

「Aを実現するには、どうすればよいのか」「Aを実現するには、Bすればよい」

したがって、方法的問答を、それが実現しようとする状態の区別によって、区別することが可能である。そして、この実現しようとする状態Aは、記述的問答によって記述されるものである。したがって、方法的問答を実現しようとする状態によって区別するとき、その区別は記述的問答の区別に対応する可能性がある。

では、記述的問答の下位区分はどうなるのだろうか。

#記述的問答の下位区分

記述的問答の下位区分については、以前に(139、140、141回)で考えたことがあるが、それはまだ不十分なものだった。ここでは、記述的問答を「自然的事実」の記述的問答と「規範的事実」の二つに区別する可能性を考えてみたい。

(1)自然的事実(自然的出来事)の記述的問答

自然的事実と出来事はどういう関係にあるのか。「事実」は、ある瞬間の状態、あるいはある時間持続する状態を意味するだろう。出来事は、状態の変化を意味するだろう。

「机の上にリンゴがあるか」という問いは「机の上にリンゴがある」という事実が成立しているかどうかを問うている。「私は机の上にリンゴを置いた」という出来事は、机の上にリンゴがない状態からリンゴがある状態への変化を意味している。「自然的出来事」は、これは、「因果の空間」で成立する出来事である。

(これをさらに次のように区別できるかもしれない。

・観察や実験によって得られる経験的単称命題、

・経験的単称命題から得られる全称命題

・理論語をもちいる理論命題 )

木の机は、自然法則に従っている。ただし、木を机にする作業は、人間の行為によるものであり、自然法則を利用するが、自然法則だけでは木が机になることお説明できない。木から机をつくる行為は、自然的な出来事ではない。これは、「人為的な出来事(man-made event)」である。人間の行為や行為によって作られた対象は、規範に関わる規範的事実や規範的出来事である。

(2)規範的事実の記述的問答

規範的事実や規範的出来事とは、規範的語彙をもちいて記述される事実や出来事である。規範的語彙とは、「…すべきである」(義務)、「…してもよい」(あるいは「…する必要はないが、してもよい」)(許可)、「…してはならない」(禁止)という語彙とこれらの語彙をもちいて言い換えられる語彙である。

「私たちは、買い物をするときには消費税を払わなければならない」という発話は、規範的事実を記述している。「彼女は、今日買い物をしたときに、消費税を支払った」という発話は、規範的出来事を記述している。規範的事実は、規範的出来事に還元できるかもしれない。しかし、理論命題を経験命題に還元できないように、規範的事実を規範的出来事に還元することは出来ないことが多い。

全ての事実を「自然的事実」と「規範的事実」に分けるとき、問答という出来事は、(2)に分類されるだろう。「規範的事実」は、「言語的事実」と呼んでもよいし、「問答的事実」と呼んでもよいだろう。

記述的問答のこの下位区分に基づいて、次に方法的問答の下位区分について考えたい。