[カテゴリー:問答の観点からの認識]
視覚空間と触覚空間がズレているときでも、私が見ているのはマグカップそのものであり、触っているのはマグカップそのものです。ただし、そのときに見ているものと触っているものが、同一だと思えないということが生じています。このような事態は素朴実在論とは矛盾しません。視覚と触覚がそれぞれ対象そのものを捉えており、その二つをどのように統合するかが問題だからです。二つの空間の同一化を再構築するとき、対象を適切に捉えることができるようになりますが、しかしそれができる前でも、対象そのものを捉えていたと言えるからです。対象の視覚パーツと触覚パーツがバラバラになっており、うまく組み合わせることができていないけれども、視覚パーツそのものと触覚パーツそのものは与えられていると言えるのです。先天盲の人は、触覚パーツだけを対象そのものとして理解しています。もちろん、視覚パーツがあることを聞いて理解していますが、それがなくても、その人は対象そのものを捉えているのです。また、例えばコウモリの空間認識のように、人間にはないような感覚器官をもった生物がいれば、それは対象について人間が知らないパーツを持っているかもしれません。
このように理解するとき、逆さ眼鏡の経験は、素朴実在論と矛盾するものではありません。