03 九ヵ月革命

しばらくは、マイケル・トマセロの『心とことばの起源を探る』(大堀壽夫、中沢恒子、西村義樹、本多啓訳、勁草書房)の説明を検討しながら、共同注意について考えたい。というのも、トマセロの見解は、私が共同注意論から引き出したいと考えている見解と食い違っているように思われるからである(本当にそうか、もし食い違うとしたらどちらが正しいのか、それはまだ即断できない。)

トマセロによれば、共同注意行動とよべる一群の行動が9ヶ月から12ヶ月に発現する。これを彼は「九ヵ月革命」とよぶ。

「生後6ヶ月の赤ちゃんは物体をつかんだり操作したりするが、そのかかわり方は二項関係である。また6ヶ月児はターンテイキングの連鎖で他者と情動を表出しあうやりとりをするが、このかかわりあいも二項的である。[・・・]しかし生後九ヶ月から十二か月になると、一群の新行動が創発してくる。[・・・]子供と大人と、そして両者が注意を向ける物体ないし事象とで構成される指示の三角形である。共同注意という用語は通常、このような社会的なスキルと社会的な相互作用が組み合わさって出来た全体を指してもちいらえることが多い。そして典型的には、赤ちゃんはこの時期にはじめて、柔軟かつ確実に、大人の見ているところを見たり(視線追従(gase following))、物体に媒介された大人との相互作用をそれなりに長い間続けたり(協調行動(joint engagement))、大人を社会的な参照点として利用したり(社会的参照(social referencing))するようにあり、また物体に対して大人がしているのと同じような働きかけをしたり(模倣学習(imitative learning))し始める。」(pp.80-81)

彼は、共同注意のスキルを3種類に分ける
1、大人の注意をチェックする(生後9~12ヶ月)
(協調行動、社会的障害物に対する反応、物の提示)
2、注意に追従する(生後11~14ヶ月)
  (視線追従、指差し追従、指令的な指さし、社会的参照)
3、注意を向けさせる(生後13~15ヶ月)
(模倣学習、宣言的な指差し、指示的な言語)

彼の調べたところでは、80%の赤ちゃんがこの順序で4ヶ月の間にこれら全てを修得したそうである。
(それぞれの用語を説明すべきかもしれないが、またおいおい行いたい。解からなければ、ぜひご質問下さい。)

私にとっての問題は、このような共同注意のメカニズムの説明方法にある。